「……私のこと、もう、飽きちゃったかな?」
茶化したような、でも、どこか真剣にも思える問いかけ。
「そんなこと、ねえよ」
朱美がシャワーを浴びている音を聞きながら、新しくタバコに火をつける。
「飽きたわけじゃあ、ないんだよ」
(アイツの身体、もうほとんど完成してるのがつまんねえ。楽っちゃ あ楽だが、一から俺が仕込んでみたいってのは、確かにあるな)
葵は今年21歳になったばかりの、俺直属の部下だ。本当は 他にも部下はいるのだが、あまり役に立たないので、大抵は葵と組んで仕事をすることが多い。
「その、二人きりでお願いしたいのですが。大事な……話なので」
俺がもう少し若ければ艶っぽい期待に胸躍らせるのだろうが、そこ
までおめでたい思考回路は所有していない。
(仕事のこと……だろうな)
「ふ、ん……」
告げられた額は、確かに大きかった。普通の家庭では、まず返済に 苦労するだろう額だ。しかし、俺には無理な額でもなかった。
「もちろん、タダではない。交換条件だ。私の出す条件をキミが満 たせるならば、の話だよ」
消え入るような声と染まる頬。葵は強張った笑顔で、俺に頭を下げた。
「よ、よろしくお願い、いたします」